いわゆるGISソフトウェアがなかった時代には、我々は地理情報の座標変換というやっかいな問題に直面せずに仕事を進められたかも知れません。地理情報を様々に再利用できるGISソフトウェアでは、様々なデータソースから入手した主題図を用途にあわせて重ね合わせるために、座標系や地図投影法の変換をせまられます。特に日本においては、いわゆるカーナビに使われる人工衛星GPS(Global Positioning System)の爆発的普及などにともなって、日本測地系(Tokyo datum)から世界測地系(Japanese Geodetic Datum 2000)への移行を経験しました。その結果、我々はこれまで専門家のみが知ればよかったことがらについて、知らなければならなくなりました。
座標変換にまつわる複雑さは座標原点位置の違いと地球楕円体の大きさに多くの種類があることに起因しています。単に緯度経度といった数字があっても、使用した座標系の情報がないことには意味がありません。座標系原点位置と楕円体は別々のものとして適用することができますが、通常は対になって使用されます。日本において使用するのは日本測地系と世界測地系、それにWGS-84だと思われます。WGS-84はGPSを利用するときに必要となるものですが、実用精度としては世界測地系と同一視してかまわないようです。なお、主な楕円体の種類は10個を超えますが、ここでは日本において利用する可能性のあるものを示しました。
座標系名称 |
楕円体名称 |
日本測地系 (Tokyo datum) |
Bessel楕円体 |
世界測地系 (Japanese Geodetic Datum 2000) |
GRS-80楕円体 |
WGS-84 |
WGS-84楕円体 |
年 |
楕円体名 |
長半径[m] |
扁平率逆数(1/f) |
主な利用 |
1984 |
WGS-84 |
6 378 137 |
298.287223563 |
GPS |
1980 |
GRS-80 |
6 378 137 |
298.257222101 |
IUGG,世界測地系 |
1841 |
Bessel |
6 377 397.155 |
299.1528128 |
日本測地系 |
1866 |
Clark1866 |
6 378 206.4 |
294.9786982 |
フィリピン他 |